樸堂コトノハ

− 等身大の佛教 −

生命線

平成24年冬。前年12月に降った雪が根雪となって残ったところに、年明けからさらに雪が降り積もり、とうとう本堂の大屋根から落ちた雪がその大屋根と交わるほどになりました。

このまま放置しておけば、本堂屋根を初めとして、庫裏との接合部分に当たる渡り廊下などの建物が大きく傷むことが予想され、お寺の総代さん方と相談の結果、重機を入れて除雪することとなりました。

さて、除雪をする際の大きな課題は雪のやり場で、結局、本堂前庭に積み上げられることになりました。私としては正面参道がふさがれることに非常な抵抗感がありましたが、この際は緊急やむを得ず、重機に押されて固い塊りとなった雪の山が、本堂前に残されることになりました。

当初は、お寺の建物を守るための緊急避難的な措置でしたので、雪が融けるまでの辛抱だからと自分自身に一所懸命言い聞かせましたが、どうにもこうにも落ち着きません。

そこでやはり一大決心、何とかこの雪山と格闘して一本の参道を復活させようと、まずはポンプを買ってきて、汲み上げた川の水で雪を融かしてみることにしました。しかし、川の水を一昼夜まいても、水の通った穴があちこちに空いただけのことでした。

私の身長をはるかに超える雪の塊りの前に立つと何とも頼りない体力ではありましたが、やはりスコップで立ち向かうしかないことを悟りました。

一度重機で固められた雪はやがて氷のようにもなっており、この除雪には本当に往生しましたが、それでもスコップを握り続けた手のひらが真っ赤に腫れた頃には一本の参道が明けられました。

本堂の正面は大きな戸が閉まっていて直接には本尊さまを拝むことは出来ませんが、それでも戸の向こうにお釈迦さまがいらっしゃる。

本堂正面の参道は、いわばお釈迦さまに続く道なのであります。

実際、冬のこんな時期にお寺にお参りに来る人はまずありません。ありませんが、しかし、お釈迦さまに続く道が閉ざされているということに、どうしても納得できない自分がありました。

これは、この世界に身を置く私の、まさに「生命線」なのではないかと思うのであります。

生命線