樸堂コトノハ

− 等身大の佛教 −

煩悩の毒蛇

お釈迦さまは、「煩悩(ぼんのう)の毒蛇(どくじゃ)、睡(ねむ)りて汝(なんじ)が心(むね)にあり」という言葉を残されています。

普段は眠っていてその存在すら忘れているのに、心の戸締りを怠っていると、何かのきっかけでそれが突然あらわれる…。

私たちの心は、本当に厄介なものだと思います。いつ「煩悩の毒蛇」が目を覚ますか分からない。

2週間前に何の前触れもなく突然引いてしまった風邪のために、その後の1週間は頭痛と咳と鼻水やらで、日常生活を送るのに精いっぱいの状態になりました。

それで、この病気の間はとにかく生きるのに必死だったために、ある意味では他の事柄を考える余裕すらありませんでした。

そしてその後の1週間も、法事や雑事に追われて、自分のことは何もできない状態でした。

それが、少々元気になってくると、今度は日常底(てい)の事柄にどしんと心を落ち着けることが出来にくくなってくる…という具合であります。

四苦八苦の中に「五蘊盛苦(ごおんじょうく)…体が元気なために起こるさまざまな煩悩」というものがありますが、若い頃のような元気があるわけではないにせよ、これと似たようなことが起こるわけです。

昔ある方が、「たとえ過去に経験した時と同じような景色を見ることがあっても、落胆することはない。私たちは螺旋(らせん)階段を登っているようなものだから…」というような話をしておられました。

確かにその通りに螺旋(らせん)階段を登っていればいいのですが、下向きに降りていても同じ景色を見るわけです。

弱気な私としては、どうかそうでないことを祈るのみであります。

煩悩の毒蛇